2014年10月29日掲載
コラム
フィボナッチ比率による値幅観測
テクニカル分析の世界ではフィボナッチ比率を用いて値幅観測と日柄観測を行うことが一般的です。特にフィボナッチ比率による値幅観測を気にする海外のトレーダーは多いため、知っておくべき知識と言えるでしょう。
フィボナッチ比率を理解しよう
まずフィボナッチ比率について簡単に説明しておきます。フィボナッチ比率は、フィボナッチ数列において現れる比率で、フィボナッチ数列は以下のように、1から始まり常に前の数字を加えていく数列(N0+N1=N2)です。
1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, …
この数列間の隣どうし比率がいわゆる黄金分割比(1:1.618)となっていて、数列のどの部分を取っても同じ比率となっています。他にもひとつ飛んだ数字どうし、ふたつ飛んだ数字どうしの比率も同様です。試しに「55, 89, 144」の部分を抜き出してその比率を見てみましょう。
このように隣どうしの比率は1.618と0.618、ひとつ飛んだ数字どうしの比率は2.618と0.382、ふたつ飛んだ数字どうしの比率は4.236と0.236、となっていて、これらの比率はフィボナッチ比率を使った値幅観測や日柄観測のターゲットを求める際の比率となります。
他にもいくつか使われる比率がありますので、以下に一覧で書いておきます。上の説明で出てこない比率については、説明を付しておきました。
0.0 | =起点 |
---|---|
0.236 | |
0.382 | |
0.5 | =半値 |
0.618 | |
0.786 | =√0.618 |
1.0 | =終点 |
1.272 | =√1.618 |
1.382 | =1.0+0.382 |
1.618 | |
2.618 | |
4.236 |
フィボナッチ比の√(平方根)まで出てくると、えっと思われる方もいるかもしれませんが、0.786と1.272は意外と使える比率なので気に留めておくと良いでしょう。個人的によく使っている比率としては、0.382, 0.5, 0.618, 0.786, 1.0, 1.272, 1.618があり、この後の実例でもこれら7つの比率を使っていくこととします。
フィボナッチ比率を使った値幅観測
フィボナッチ比率を使った値幅観測には、「プライス・リトレイスメント」(フィボナッチ戻し)と「プライス・エクスパンション」(均衡表のN波動と同じ概念)の2つがあります。
(1)プライス・リトレイスメント
起点と終点を定め、その値幅からリトレイスメント(押し、戻し)のターゲットを求めます。
ポンド円日足の例ですが、1月安値(起点)と7月高値(終点)から求められるターゲットを青線で、5月安値(起点)と7月高値(終点)から求められるターゲットをピンクの線で示してあります。このように複数のリトレイスメントからターゲットを求め、それらが重なるレートを重視します。上のチャートでは、8月中旬のレートは青線の38.2%押しとピンクの線の78.6%押しが重なるレートであり、最初のサポートとなりやすく、また青い線の50%押しとピンクの線の100%が重なる5月安値圏も今後重要なサポートとなることがわかります。ピンクの線を見るとわかりますが、リトレイスメントでも100%を超え127.2%といった数値を使うこともあり、これを特に「プライス・プロジェクション」と呼ぶことがあります。
フィボナッチ比率とN計算値を応用
(2)プライス・エクスパンション
プライス・エクスパンションは均衡表のN波動における値幅観測(N計算値)と同じ考え方をフィボナッチ比率で求めるものです。
ユーロドル日足の例ですが、5月高値から6月安値への下げ、その後7月高値への戻しから逆N波動を考え、そのターゲットを求めると61.8%〜78.6%が8月中旬にもみあっている水準と重なり、次のターゲット100%(均衡表のN計算値と同じ)が1.32レベルにあることがわかります。ユーロドルが昨年11月の安値を抜けた場合のターゲットとして考えておくべき水準となります。

- 山中康司氏
- 1982年アメリカ銀行入行、1989年バイスプレジテント、1993年プロプライエタリー・マネージャー。1997年日興証券入社、1999年日興シティ信託銀行為替資金部次長。2002年アセンダント社設立・取締役。テクニカル分析とアストロを組み合わせた独自の為替予測を行ない、各社にレポートを配信。セミナー講師やコンサルティング等もつとめている。
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