- 取材協力 川合 美智子(かわい・みちこ)
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旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)在勤の1980年より若林栄四の下で罫線分析を研究、習熟する。同行でカスタマー・ディーラーとして活躍した後、1989年より在日外銀でカスタマー・ディーラーとして、また、外国為替ストラテジストとして抜群の人気を博す。罫線分析を基にした為替相場コメントには定評がある。現在、(株)ワカバヤシ エフエックス アソシエイツの代表取締役 兼 外国為替ストラテジスト。
第2章FXではどうやって利益を上げるのか?
FXでは円高、円安どちらでも利益を狙える
投資をする人ならば、誰もが欲しいのは「大きな利益」。FXで収益を得るためには、為替差益を狙うのが主な手段ですが、この為替差益を狙うにあたっても、大きくわけると2つの方法があります。
ひとつは、持っている日本円で外貨を買い、円安(円の他通貨に対する値価が下がること)になったらその外貨を売り払って利益を出すというもの。そして、もうひとつは、将来的に値下がりする可能性の高い外貨を先に売り、値下がりしたら買い戻す方法です。
これは、後述しますが、実際には持っていない外貨を売る、という発想に基づく売買手法で、概念がやや複雑ですが、ここでは「金融機関から外貨を借りて、その外貨を売る」と考えておくと、理解がしやすいかもしれません。
日本円で生活している日本人の場合、当然投資用の資金として使うのは日本円になるケースが多いのではないでしょうか。ただ、円をベースに考えると、日本円で外貨を買って、その通貨が高くなったらその通貨を売る……というのがわかりやすい利益の獲得の仕方です。でも、そうなると、「円安のときしか儲からないのでは?」と思ってしまいがち。ですが、実は円安でも円高でも利益を獲得できるのがFXの特徴のひとつです。
「日本円で外貨を買う外貨預金の場合は、円安にならないと利益を生むことができません。ですが、FXの場合は、『外貨を売る』というところから始めることもできるんです」(川合さん)
たとえば、1米ドル110円のときに1万米ドル分を売ります(その時点では日本円で換算すると、110万円を持っているということになります)。その後、1ドル100円とレートが下がったときに、その110万円でドルを買い戻すことで1万1000ドル、つまり、差益1000ドル(日本円で10万円)の儲けを手にすることができることになります。

もし「円高に動く」と予想ができれば外貨を売る。そして、「円安に動く」と思えば、逆に外貨を買えば、為替差益を享受することができるのです。
「この外貨を買うところから始めることを『買いから入る』。そして、外貨を売るところから始めることを『売りから入る』といいます。どちらが取引しやすいということはありませんが、先進国の通貨は流動性も厚く、また現在はどの国も金融政策が緩和的で金利差も殆どない状態ですからこの『売りから入る』方法も活用すべきだと思います。初心者の人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、FXをやる上では一般常識といってもいいでしょう」(川合さん)
FXで覚えておきたい分析法
FXで利益をあげるために欠かせないのが、その国の経済状況を調べるファンデメンタルズ分析と相場の方向性を見るのに役立つチャートなどを使ったテクニカル分析と呼ばれるものです。
「ファンダメンタルズ分析は、経済成長率、雇用、個人消費や製造業の動向、金融政策を含むその国の経済情報をもとに、今後の為替変動を予想するものです。これは、新聞やテレビ、雑誌などをはじめとしたニュースなどから、各国の情勢をチェックし、ある程度の先行きを予測します」(川合さん)
そして、一方のテクニカル分析は、チャートなどを使いながら、過去の値動きを参考に為替相場の方向性を予想していくもの。
「テクニカル分析のなかでも基本となるのが『ローソク足』と呼ばれるチャート。これは、始値(寄り付き)、終値、高値、安値を一つの足に記したものです。毎日の値動きを表した『日足チャート』で数日間から1週間程度の短期的な方向性を、その週の値動きを表した『週足チャート』では1〜2か月のやや中期的な方向性を探るのに役立ちます。また、月の値動きを表した『月足チャート』などは長期的なトレンドがどちらの方向を向いているのか確認するのに用います」(川合さん)
最初のうちは、チャートを見てもただのグラフにしか見えないかもしれませんが、これらを積み重ねて眺めていくことで、「『ここはもう少ししたら下がるな』『ここは上がり過ぎだな』と、予測が立つようになっていきます」(川合さん)
そのほかにも、上級者になれば様々な分析ツールなどを使いこなす人も多いですが、まずは、あまり欲張りすぎず、シンプルにニュースとチャート。そしてこのチャートにトレンドラインでも引いて置けば十分でしょう。両方の材料と値動きを捉えることで、少しずつFXに慣れ親しんでいくことが肝心なのかもしれません。

通貨ペア
FXは外国為替を交換する取引。交換するのですから通貨は必ず対になっており、「通貨ペア」と呼びます。例えば、日本円を米ドルに交換するならば、米ドル/円のレートを確認して取引します。このときの通貨ペアが「米ドル/円」になります。
主要な通貨を挙げると米ドル、ユーロ、日本円、英ポンド、豪ドル、NZドル、カナダドル、人民元、香港ドルなどの通貨がありますが、各種通貨の組み合わせの数だけ通貨ペアは、存在することになります。
とりわけ、FX市場において存在感を発揮しているのは米ドル、ユーロ、日本円です。米ドル/円、ユーロ/円、ユーロ/米ドルの3つの通貨ペアが影響力を持っており、取引高も抜きんでています。
通貨ペア | 通貨ペア略称 | 取り扱い | ||
---|---|---|---|---|
SBI FXTRADE | みんなのFX | LINE FX | ||
米ドル/円 | USD/JPY | ● | ● | ● |
ユーロ/円 | EUR/JPY | ● | ● | ● |
英ポンド/円 | GBP/JPY | ● | ● | ● |
豪ドル/円 | AUD/JPY | ● | ● | ● |
ニュージーランドドル/円 | NZD/JPY | ● | ● | ● |
スイスフラン/円 | CHF/JPY | ● | ● | ● |
カナダドル/円 | CAD/JPY | ● | ● | ● |
南アフリカランド/円 | ZAR/JPY | ● | ● | ● |
ユーロ/米ドル | EUR/USD | ● | ● | ● |
英ポンド/米ドル | GBP/USD | ● | ● | ● |
ニュージーランドドル/米ドル | NZD/USD | ● | ● | ● |
米ドル/スイスフラン | USD/CHF | ● | ● | ● |
ユーロ/英ポンド | EUR/GBP | ● | ● | ● |
ユーロ/豪ドル | EUR/AUD | ● | ● | ● |
ユーロ/ニュージーランドドル | EUR/NZD | ● | ● | |
ユーロ/スイスフラン | EUR/CHF | ● | ● | ● |
英ポンド/豪ドル | GBP/AUD | ● | ● | ● |
英ポンド/スイスフラン | GBP/CHF | ● | ● | ● |
中華人民元/円 | CNH/JPY | ● | ● |
スワップポイントはFXのもう一つの収益源
FXでは主な収益となるのは、為替差益ですが、実はもうひとつの収益源があります。それが「スワップポイント」と呼ばれるものです。はたして、「スワップポイント」とはなんなのでしょうか?
「スワップポイントとは、簡単に説明すると2つの通貨の金利差から生ずるFXの利子のようなものです。それぞれの通貨には国が定めた金利があり、2つの通貨の間の金利差を表すもので、高い金利の通貨を買った場合は、外貨預金の利息が付くことと似た効果を得られますが。逆に売った場合は金利を支払うことになりますから、元本が目減りすることになります」(川合さん)
たとえば、日本の金利が年1%で、オーストラリアの金利が年3%だったとします。豪ドルを買って日本円を売ったとすると、「3%−1%=年率2%」に相当する金利が、スワップポイントとなります。反対に、豪ドルを売って日本円を買った場合、「1%−3%=−2%」と、2%分の金利の差額相当分をスワップポイントとして支払わなければならないケースもあります。

「ただ、先進国の通貨ではほとんどゼロ金利に近いので、『安く買って、高く売る』『高いところを売って下がったところで買い戻す』のどちらの場合でも金利面で大きな損に繋がらないので、トレンド(方向性)に賭けて勝負した方が勝機に繋がるのは明らかですから。FXの原則を考える上では、スワップポイントの収益は無視したほうがいいでしょう」(川合さん)
ちなみに、スワップポイントは、FX会社によって、その設定値が変わってきます。そのため、こうした高金利の通貨を長期保有することでスワップポイントでの運用を考えるならば、できるだけスワップポイントを高めに設定しているFX会社を選んでみるのもひとつの手です。
スワップ狙いに潜むリスクとは?
持っているだけで金利が発生する。銀行の金利がほとんどゼロに近いなか、スワップポイントはうまく利用すれば収益が期待できます。ただ、一方で川合さんはこう注意点を指摘します。
「スワップポイントを狙う際には、注意も必要です。高金利通貨と呼ばれる通貨には市場流動性が乏しいものも多く、予想以上に大きく変動することがあります。たとえば、2015年のトルコリラの値動きを見てみても見ても下値38円台から50円台までと非常に値動きが大きい。
米ドル/円に換算して考えればわかりやすいと思いますが、1年の間で30〜35円も値動きがある計算になります。高金利通貨ほど、リスク要因も多く何が起こるか分かりません。
どうしてもスワップポイントを狙いたいという人は、損切りするハメにならないように、十分な証拠金を置いて余裕を持った投資が必要です。レバレッジを2〜3倍、ポジションの大きさも普段の取引の10分の1、20分の1の量ぐらいにするなら長期投資としてメリットがあるでしょう」(川合さん)
スワップポイントを狙うのはいいけれども、いつ急落の恐れがあるかもわからない。万が一の事態を想定して資金力を残しておかないと、証拠金がなくなってしまう恐れがあるということです。スワップポイントはあくまでおまけと思って購入するのが、一番の得策なのかもしれません。
高金利通貨
各国がさまざまな経済政策を行っており各国とも金利を設定しています。日本はゼロ金利政策を実施中で、日本円は10年以上低金利の通貨となっていますが、自国の金利を4〜12%程度と比較的高金利に設定している国があります。おおざっぱではありますが高金利通貨と呼ぶこともあります。
総じて金利を高めに設定している国はインフレの抑制や景気の過熱防止を図るために行っています。
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