- 取材協力 川合 美智子(かわい・みちこ)
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旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)在勤の1980年より若林栄四の下で罫線分析を研究、習熟する。同行でカスタマー・ディーラーとして活躍した後、1989年より在日外銀でカスタマー・ディーラーとして、また、外国為替ストラテジストとして抜群の人気を博す。罫線分析を基にした為替相場コメントには定評がある。現在、(株)ワカバヤシ エフエックス アソシエイツの代表取締役 兼 外国為替ストラテジスト。
第8章FXのリスク
注意しておくべきリスク
公平なマーケットに、元手金が少なくてもうまくいけば大きな利益が求められるのがFXの魅力です。その一方で、注意しておくべきリスクも多々あります。以下では主なリスクについて取り上げ、解説していきます。
為替変動リスク
為替はその国の情勢を表すものですが、地政学的リスクや、政治的な要因、政府要人の発言、または経済指標の発表、金融政策の変更などにより、トレンドが大きく変化することがあります。そのため、短時間に大幅に動いてしまい、予測に大きな狂いが生じて大きな損をしてしまうリスクがあるのです。
予め、注目される経済指標についての関連情報を集めておくことや、予想外の動きとなった場合に備えて、損失のラインを決めておき、一定上の損が発生した場合は警告を発する「マージンコール」などのサービスを利用すると良いでしょう。さらに、証拠金以上の損失を出して強制決済されないためにも、証拠金を十分に置くことや、ポジションの関係にも注意しておきましょう。
金利変動リスク
これは、第2章で登場したスワップポイントが大きく関わってきます。スワップポイントはその国の制定した政策金利に影響を受けるものですが、政策金利自体が変更されるとスワップポイントも大きく変動することになります。
よって、金利の変化により得られるスワップポイントが変動、場合によっては受け払いの方向が逆転する可能性があります。
流動性リスク
相場の急変時にはスプレッドが拡大し、値動きも荒くなってスムーズにトレードができない可能性が出てきます。これが流動性リスクです。通貨によって流動性には違いがありますが、流動性の低い通貨は下落するときにはストンと落ちることもあります。取引をする場合は注意しましょう。
そのほか、FX業者が破綻や倒産してしまったため、預けた資金が自分の手元に戻ってこない「信用リスク」もありますが、日本の証拠金会社は顧客勘定を分別管理することを義務づけられており、信託保全していますから、大きな心配は不要でしょう。そのほか、FXは基本的にパソコンやスマホなどネット回線で取引を行うことが多いため、ネット障害などによる「システム障害リスク」。また、同じくパソコン機器などの不調による「誤発注リスク」などもあります。以下にリスクについてまとめていますので、必ず目を通しておきましょう。
為替変動リスク | FXでは為替相場が予想とは逆に動いた場合に、為替差損が発生します。為替相場は、テロや戦争などにより急変する場合もあり、想定よりも大きな損失が発生する可能性もあります。 |
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金利変動リスク | スワップポイントは、各通貨の金利に連動し、日々変化します。よって、金利の変化により得られるスワップポイントが変動、場合によっては受け払いの方向が逆転する可能性があります。 |
流動性リスク | マーケットの状況(普段から流動性の低い通貨の取引、天変地異や政変の発生など)によっては、買い手と売り手の需要が噛み合わず、決済や注文が困難になる可能性があります。 |
レバレッジ効果によるリスク | FXはレバレッジにより、少ない資金で大きな取引ができ、これにより大きな利益を得ることも可能です。一方、レバレッジのかけ具合に比例して、発生しうる損益が大きくなるので、資金を失うまたは資金を超える損失を被る可能性があります。 |
信用リスク | FX会社の倒産・破産などによって、預けた資金を引出せなくなる、失ってしまう可能性があります。 |
システムに関するリスク | システム・通信障害などによって取引ができなくなってしまう可能性や、口座番号・パスワードが漏洩した場合、第三者が悪用することによって損失が発生する可能性があります。 |
FXは自己管理ができなければ失敗する
FXをやる心構えとして、川合さんがもっとも大切なこととしてアドバイスするのが「自己管理を徹底し、自分も相場も客観的に見る」ということです。
「儲けの目標金額を決めるなど、お金勘定を始めると、どうしても客観的な見方が出来なくなりがちです。『月間いくら儲けて、それを生活費にあてよう……』とか、欲が出てしまうと正しい判断ができなくなってしまうからです。FXでの勝ち負けを考える時は、『何ポイント勝った』とか、『何円抜いた』とか利益を数字として捉えるようにしたほうがいいかもしれません。これにより相場も自分も客観的に見ることができるようになります」(川合さん)
さらに、川合さんは「FXには失敗はつきもの」とも続けます。
「FXで失敗しない人はいません。問題は、自分が失った損をどうやって取り戻していくか、失敗してからが勝負なんです。大きな失敗をする前に、『これを切れたらイメージが違う』とか、『よくわからないから一旦撤退して様子を見よう』とか客観的に相場を見ようとする努力も必要です。こうした自己管理もできずに、オロオロしたり、冷静に対処できないようなら上手く危機を脱し切れませんから」(川合さん)
FXを取引する上でなにより重要なのは相場と自分を客観視し、例え失敗した場合においても、しっかりと自己管理を忘れないことのようです。
マージンコールとロスカット、追証
FXを取引する際に、独特な用語が多く意味がよく分からないと思う方も多いはず。損にまつわる用語は抑えておきましょう。
FXに置いてポジションを持ち、含み損になってしまったとき。決済をしなければ、含み損は確定損にはなりません。ただ含み損を維持するためにも証拠金は必要です。資金効率を考えれば大幅な含み損を抱えていたら損切りを考えることも必要でしょう。
証拠金以上にレートが動き、損をしてしまうとその損失は個人だけでなくFX会社にかかることになります。証拠金以上に損をしないために、損失額が証拠金額に近づいてきて証拠金額を下回ると追証が発生します。追証とは追加で証拠金を入れなければいけない状態のこと。その入金がなければ口座を維持できないのです。そして、その追証が請求されることをマージンコールと呼びます。
マージンコールに応じず含み損が拡大したら、強制決済がかかります。強制的にFX会社が顧客の資産を損切りする行為になります。この強制決済は強制ロスカットとも呼ばれます。なるべくなら、経験したくないですが、FX相場は暴騰・暴落もままあり得ますから、強制決済が発生することも。無理なポジションは持たず、余裕を持った資金で取引をしたいですね。
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