- 取材協力 川合 美智子(かわい・みちこ)
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旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)在勤の1980年より若林栄四の下で罫線分析を研究、習熟する。同行でカスタマー・ディーラーとして活躍した後、1989年より在日外銀でカスタマー・ディーラーとして、また、外国為替ストラテジストとして抜群の人気を博す。罫線分析を基にした為替相場コメントには定評がある。現在、(株)ワカバヤシ エフエックス アソシエイツの代表取締役 兼 外国為替ストラテジスト。
第5章FXの税金
FXで利益が出た場合には、税金がかかります。また、確定申告をご自身で行う必要があります。FXの税金制度と確定申告について十分に理解して、FXをはじめましょう。
FXの税金制度の概要
FXでの利益に対しては「先物取引にかかわる雑所得等」として他の所得とは区分され、自身で確定申告を行う必要がある「申告分離課税」として、一律20%(所得税 15%+地方税5%)※が課税されます。
※2013年〜2037年は、所得税に対して2.1%復興特別所得税が課されるため、期間中の税率は20.315%となります。
例)
給与所得者(給与収入が2000万円以下)がFXのみの取引で年間100万円の利益
⇒課税対象額は100万円、20.315%の課税で税額は20.3万円
尚、課税対象は「実利益」となりますので、決済していない含み益は、当然課税対象ではありません。自身の1年間での損益については、取引に利用しているFX会社や証券会社からの「年間損益報告書」などで確認してみましょう。
FX以外の「先物取引」との損益通算
FXは「先物取引にかかわる雑所得等」として区分されていますが、FX以外の他の「先物取引」(日経225先物、金や原油等の商品先物、CFD、バイナリーオプションなど)で損失があった場合、同じ「先物取引にかかる雑所得」内で損益通算できます。
損益通算とは、FXの利益を他の先物取引の損失と相殺することです。これにより、他取引で損失があった分、利益の金額を減らすことができ、課税対象となる金額を減らすことができるのです。しかし、株取引での損失など「先物取引以外の損失」とは損益通算できませんので、注意が必要です。
例)
給与所得者(給与収入が2000万円以下)がFXの取引で年間100万円の利益、別の先物取引で30万円の損失
⇒課税対象金額は70万円(=100万円−30万円)、20.315%の課税で税額は14.2万円
FXの損失の繰越控除
FXで損失を出した場合、またFX以外の「先物取引」との損益通算によっても損失出る場合、確定申告を行うことで、その損失額を翌年から3年間に渡って、FXを含む「先物取引」の利益と相殺することができます。
- 例)
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- 取引年:給与所得者(給与収入が2000万円以下)がFXの取引で年間100万円の利益、別の先物取引で200万円の損失、差し引き100万円の損失
⇒課税対象額は0円(100万円−200万円) - 翌1年目:FXの取引で年間50万円の利益
⇒課税対象額は0円(50万円−50万円)、2年目に繰越できる損失−50万円 - 2年目:FX取引で年間40万円の利益
⇒課税対象額は0円(40万円−40万円)、3年目に繰越できる損失−10万円 - 3年目:FX取引で年間10万円の利益
⇒課税対象額は0円(10万円−10万円)
- 取引年:給与所得者(給与収入が2000万円以下)がFXの取引で年間100万円の利益、別の先物取引で200万円の損失、差し引き100万円の損失
税制についてのさらに詳しい情報は以下の関連国税庁ホームページでご確認ください
FXの確定申告
FXの確定申告は毎年1月1日〜12月31日の1年間に生じた所得に対して、翌年の申告期間、通常、2月16日から3月15日(3月15日が土日、祝日の場合は翌平日)まで1ヶ月間の間に行います。各種必要書類の記入や取得が必要となりますので、ギリギリになって慌てないよう準備しておきましょう。
必要書類
確定申告書に「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」の添付が必要。損失を繰り越す場合は「申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」も必要となります。
確定申告の方法
確定申告書を作成・提出する方法は複数ありますが、最近では自宅のパソコンから書類作成・提出まで完結できる仕組みもあります。納税・還付までインターネットバンキングでできるので、一度検討してみてはいかがでしょうか。
- 国税庁のホームページの「確定申告書等作成コーナー」で書類作成、印刷物を郵送または税務署に提出
- 自宅のパソコンからe-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用し、インターネットで電子書類で提出
- 税務署や最寄りの還付申告センターで書類作成、その場で提出
※e-taxの利用には「電子証明書」取得、ICカードリライタの取得設定、開始届出書の提出と利用者識別番号の取得などが各種事前設定が必要となります。詳細はe-taxのホームページでご確認ください。
「FX税金ガイド!税率や確定申告の書き方を解説」の記事を見る
会社員がFXで税金を支払わなくてもよいケースがある?
給与所得者で、確定申告をする義務がない、結果としてFXでの利益に対する税金を払わなくてすむケースがあります。それは以下の場合です。
- 給与所得者のうち給与収入が2000万円以下
- 給与・退職所得以外の所得の合計(FXの利益を含む)金額が20万円以下
ただし、この場合でも注意が必要です。例えば住宅ローンの控除を受けるために確定申告をするようなケースではFXの利益が20万円以下であっても申告の内容に記載して納税しなければなりません。あくまでも確定申告を行う義務がないだけで、FXでの利益が「免税」になっているわけではないのです。
確定申告の必要有無は、給与所得者、年金生活者、個人事業主ごと、諸条件によって変わってきます。詳細は先に紹介した関連国税庁のホームページでご確認ください。
FXで脱税
もしも年間で20万円以上FXでの儲けがあるのにFXで確定申告をしなかったらどうなってしまうのでしょうか。結論から言うと、脱税で犯罪に問われます。場合によってはペナルティとして罰金と重い重加算税が課される事もあります。
2008年に当時60代の主婦がFXによる脱税で逮捕されました。脱税額はおよそ4億4000万円。すべてFXでの収益だったのですが、この主婦は確定申告をしておらず、税金を払っていなかったために所得税1億3900万円、延滞税3600万円、重加算税8000万円、罰金3400万円と総額3億1900万円を納めることになったのです。
仮にきちんと確定申告をしていれば、延滞税や重加算税、罰金は課されなかったので1億5000万円は手元に残った計算になります。納税は国民の義務。FXで儲けたらしっかり確定申告をしましょう。
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